「女性研究者の活躍とダイバーシティ推進 ~研究員26年の歩みとここ2年間~」


satoh_sama_02

 本日は産業技術総合研究所にお勤めの佐藤さんから、「女性研究者の活躍とダイバーシティ推進 ~研究員26年の歩みとここ2年間~」をテーマにお話ししていただきました。
 産業技術総合研究所(以下、産総研)は、1882年に設立された農商務省地質調査所を起源とする公的な研究機関で、2001年に通商産業省工業技術院傘下の15の研究所と計量教習所が統合再編され、現在、国立研究開発法人として活動している団体です。
 佐藤さんは産総研の前身である工業技術院生命工学工業技術研究所に就職され、バイオメディカル部門でバイオセンシング技術や、海水のpH測定などの研究、省エネルギー技術研究部門に異動後は蓄電池などの研究に携わり、2016年10月にグループ長に就任されました。グループ長として電池に関する報告書を研究員とともに作成し、「さぁ、これから!」というときに、ダイバーシティ推進室室長への辞令が出ました。「まぁ、望まれているうちが花かな」と思い、結構悩んだ末に「その時その時ベストをつくせば、何か見つかる」と、23年間の研究職からの異動を決心されました。
 異動して実感したことは、研究職は個性を光らせるのに対して、事務職は部署のカラーを優先するなど、研究職と事務職との価値観の違いに大変悩まれたそうです。事務職の管理職というものを全く知らなかったからこそ、引き受けることができたのかもしれない、知っていたら絶対引き受けなかった、とおっしゃっていました。
 ダイバーシティ推進室では、女性活躍推進法行動計画、次世代法行動計画、産総研第4期ダイバーシティ推進策がそろって2020年3月31日に期限を迎えるため、次の行動計画を作成することになり、所内会議、理事会を何度も何度も繰り返し、法対応の行動計画を2020年3月31日に東京労働局に提出、2025年3月31日までの産総研ダイバーシティ推進策も無事策定されました。その中でわかったこととして
① 結局誰もやらない。責任を取る人がいない。私が中心になってやるしかなかった。
② 時系列をよく確認。上層部の予定を押さえることが何よりも大切。
③ 上司も人間。同じことでも理解してもらいやすい、通りやすいタイミングがある。
④ 仲間(話を共有してくれるひと)を確保。敵を作ったらアウト。
の4つを挙げられていました。
 産総研のダイバーシティ推進の課題としては、①女性研究員の確保、②女性管理職の育成・登用、③職員のモチベーション向上、④ダイバーシティ推進に向けての風土醸成、があるとおっしゃっています。
 今年の10月で当初の任期2年を迎えるので、異動があれば研究職にまた戻るのではないかとのことです。ダイバーシティ推進室での事務職管理職で得た経験が、調整力など何かほかのことに役立つかもしれないと期待されており、一生懸命やりきって良かったと思える2年間だったそうです。研究員としての頭は錆びついてしまったかもしれないが、漠然と生きていてはもったいない、また1から立ち上げ直し研究もがんばろう、と決意を新たにされていました。

参加者からは、「佐藤様の変化を前向きに捉えていらっしゃるバイタリティに勇気をいただいた」「様々な困難を乗り越えていらっしゃっていて、そのモチベーションはどこから来るのかを是非教えていただきたいと思った」とのコメントがあり、研究会後の交流会も盛会となりました。佐藤様、どうもありがとうございました。
diwo_0911_01

<次回のオンライン研究会のお知らせ>

【第5回オンライン研究会】2020年10月7日(水)
令和時代に進化・発展の道か?停滞・消滅の道か?
~問われる組織と個人の選択~
登壇:主催者 植田寿乃

皆様のご参加を心よりお待ち申し上げています。引き続き、どうぞよろしくお願い致します。
(文責:田中慶子、高久和男、山岡正子)