オムロンのダイバーシティ施策とSDGsへの取組
~女性活躍推進&ダイバーシティ推進の軌跡と未来に向かって

事例発表: オムロン エキスパートリンク株式会社 上村 千絵氏


本日は、オムロンエキスパートリンク株式会社 ダイバーシティ推進部 部長の上村千絵様より「女性活躍推進とダイバーシティ推進の軌跡と未来に向かって」をテーマにお話しいただきました。
上村さんは1992年にオムロン株式会社へ一般職として入社され、最初は購買部に配属され(その際、学校でパンなどを販売している「購買部」と勘違いし、モチベーションが下がったという、新入社員ならではの面白い逸話もご紹介いただきました)、その後、お二人のお子様の産休・育休を経ながら、総合職への転換、マネージャ昇格試験への挑戦をされ、現在は短時間勤務マネージャとしてご活躍されていらっしゃいます。

オムロンでは、「ダイバーシティ(多様性)はオムロン発展の原動力である」 と代表取締役社長CEOご自身が社内外に発信し続けていらっしゃり、「なぜ、ダイバーシティを推進するのか」、「ダイバーシティを推進することで実現している姿」、をそれぞれ明確に言語化しています。なぜダイバーシティを推進するのか―。それに対するオムロンの答えは、「オムロンで働くすべての人が、自分の個性を思う存分発揮することで起こる刺激と葛藤で化学反応を起こし、イノベーションを創造するため」。この“葛藤”という言葉が非常にリアルで印象的でした。

1.女性活躍推進の取組み
オムロンでは現在、女性役員が4名いらっしゃり、経営基幹職比率も年々増加し、2020年4月現在5.9%となっています。
しかしながら、取り組みを始めた当初は(2012年頃)、それまでも女性活躍の取組みはやっていたものの、なかなか進んでいない、結果が思わしくない、という状況に直面し、その原因、「たぶん、違うこと」として3つの仮説を立てたそうです。それは
①「女性が活躍している」と聞いて思い描くものが違うのではないか?
上司、職場、女性が目指しているものがそれぞれ違うからゴールにたどり着かないのではないか
②「なぜ女性活躍に取組むか」が腹落ちしていないのではないか
女性活躍が必要と思う理由は違ってもいいが、なぜ取り組むのかが腹落ちしていないから、総論OK、各論NOになるのではないか
③「女性」の理解が違っているのではないか
「女性もビジネスの上では、男性と全く同じであるべき」だが、ここから理論が飛躍して、「女性も男性と同じ思考をするべき」、「女性も男性と同じ働き方をするべき」、「女性も男性と同じやりがいをもつべき」などとなっているのではないか。

このようなことが原因となって女性活躍の取組みは成果がなかなか出なかったのではないかという振返りのもと、オムロンもその後様々な経験を経て、次のような思いを大切にしているそうです。
 
★オムロンが女性活躍の取組にあたって大切にしている想い
①「女性」といっても、いろいろな立場、役割、能力、プライベート環境があって、仕事を通じて目指す姿、描くゴールもいろいろである。だから、女性が活躍している姿もいろいろあるべき。自らの成長と会社への貢献のベクトルが合う、自分にあった活躍の姿を描いてほしい。
②目指すゴールは、100人=100通りの活躍 「一人ひとりがフルポテンシャルを発揮する」
③女性が活躍する組織にあるためには、女性自身の変革だけではなく、会社(経営・職場)の変革が重要。そのためのキーワードは 「対話」(部下、上司)と「腹落ち」
特に上司、部下の「対話」については、上司が部下と信頼関係を築き、部下のキャリア・活躍を支援していくうえで非常に重要であるとのことでした。

●女性のさらなる活躍に向けて
2020年の状態性ゴールは、「多様なロールモデルが各部門の各層に複数名誕生し、個性を発揮することで、新しい価値を創造している状態をつくります。」ということで、実際、女性経営基幹職は2012年の22人(1.4%)から、2020年の90人(5.9%)と増加し、多様なロールモデルが誕生しています。例えば、
・オムロングループ内での夫婦ともにマネージャ
・マネージャになってからの出産(育休取得)
・既婚者の中で子供有の方の増加
・部長職
・短時間勤務マネージャ
・派遣社員→正社員→マネージャ昇格
まさに多様なマネージャが活躍されていらっしゃることがよく分かります。

今後は在宅でも活躍できるITネットワーク環境をさらに整備されていかれるとのことで、これにより、育児や介護などを抱える方でもますます柔軟な形で働ける環境を実現していくそうです。
また、このコロナ禍においても、「学びのスピードをとめない」を合言葉に、いち早くオンライン研修を取り入れられ、Queの植田が2013年より登壇させていただいている「女性エンカレッジ研修」におきましても、今年度よりオンラインにて実施していただいております。

なお、オムロン様におけるダイバーシティ推進の取組みは社外からも高く評価され、ESGインデックスへ多数組み入れられ、なでしこ銘柄へは2017年度より2年連続の選定、2019年には日経SDGs経営大賞「DGs戦略・経済価値賞」を受賞されました。

2.障がい者活躍取組み
オムロンの障がい者雇用の歴史は古く、1972年、オムロン創業者の立石一真様は、社会福祉法人「太陽の家」(創設者:中村裕医学博士)と共同出資し、日本初の障がい者のために福祉工場オムロン太陽を設立されました。それ以来、障がいのある方の就労機会の創出と活躍機会の拡大に全社を挙げて取り組んでいらっしゃいます。
オムロンでは、障がいのある方が安心して業務に取り組めるよう、ハード面とソフト面の支援を行い、2020年の障がい者雇用率は、法定雇用率を大幅に上回る3.0%となっていらっしゃいます。

3.LGBTQの取組み 
オムロングループでは、2015年から誰もが働きやすい職場づくりとして取組みを開始し、「LGBTQメンバーの就労や活躍機会を拡大していくことで、個性を生かした人と組織の同時成長ができている」ことを目指す姿としています。
具体的な取組みとしては、
・制度改訂:家族(配偶)の定義に同性パートナーを含める
・相談窓口の設置(社内外に複数)
・ユニフォームの見直し(男女共通デザインへ)
等を実施し、窓口の設置に関しては、「話を聞いてくれる場所があるのがうれしい。」と本人たちからの喜びの声が寄せられているそうです。また、社外表彰「Work with Pride」へ応募され、最高評価の「ゴールド」を2017年から4年連続で受賞されました。

2015年3月に実施したセミナーを受講した京阪奈事業所の事業所担当者の発案により、車いす専用トイレを「みんなのトイレ」に変更し、「どなたでも自由に使える」を目指した想いを込めて、虹色の表記も入れたトイレ表記のデザインも自分たちで作成されたそうです。
このような事業所から始まった取組みが、現在、オムロングループ全体へ広がっているそうです。

4、最後に~躍進し続けるために~
「ダイバーシティ推進が実現されている姿は、一人や二人、そして一社や二社のがんばりで、どうにかなるものではない。しかしながら、気のついた一人ひとりが少しずつ、自分のできることをやる。
その積み重ねが、きっと10年後の、オムロンで働くわたしたちとステークホルダーのみなさまとの明るい笑顔と活き活きとした生活をつくっていけると信じて活動を進めてまいります。」
というメッセージとともに、発表を締めくくられました。

上村さんご自身が、「きれいごとでない本音で話すことを大事にしている。」とおっしゃったように、この度の発表におかれましても、まさに本音の自然体で語ってくださり、参加者の皆様が何度もうなずきながら聞き入っていらっしゃる姿が非常に印象的でした。

(文責:昌宅由美子、臼井淑子)
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