「コロナ禍を追い風に15名のプロジェクト体制で走る!」
~ダイセルのダイバーシティ推進の軌跡~
<事例発表>
株式会社ダイセル
ダイバーシティ推進プロジェクト
プロジェクトリーダー 浅井 種美氏 & うぇるびーチーム
本日は「コロナ禍を追い風に15名のプロジェクト体制で走る!~ダイセルのダイバーシティ推進の軌跡~」をテーマに、株式会社ダイセル ダイバーシティ推進プロジェクトチームより7名の皆さまに参加いただき、今年1年の活動をお話しいただきました。
こちらのプロジェクトでは、肩書や職位を超えて本音で意見交換ができる関係性を築くためにニックネームで呼びあっていると伺いましたので、以下ニックネームもあわせてご紹介させていただきます。また、発表の際には、皆様片手にカラフルなダルマを掲げており、ダルマに込めたプロジェクへの想いやご自身の未来宣言をお伺いすることができたので、そちらについても触れさせていただきました。
まずはプロジェクトリーダーであるTammyこと浅井さんから、プロジェクトの成功を願う「黄色のダルマ」と共にダイバーシティ推進プロジェクト発足までの道のりについてお話しいただきました。ダイセルは1919年に日本のセルロイド会社8社が合併して誕生し、セルロース化学、有機合成化学、高分子化学、火薬工学をコア技術にして、化学製品、高機能材料、精密火工品システムなど、化学の枠を超えて、さまざまな分野でグローバルに事業を展開しています。Tammyさんは研究者としてダイセルに入社し、最初に配属された部署では男性30名の中で女性一人という少々びっくりした環境からスタートし、総合職1期生、育児休業第1期生、そして管理職へとキャリアを積まれてきました。そして管理職として組織に関わる中で、部下の応援や人を活かせる組織作りに対する想いが募り、2018年に全社ダイバーシティ推進部門の発足に関わられました。
2019年にはダイバーシティ推進&働き方改革の講演(植田登壇)を3か月の間に22回実施し、役員から管理職も含め、全社員の半数である約1200人が同じ講演を受けるという大々的なキャンペーンを実施されました。全国各地、6工場(綱干、広畑、播磨、新井、大竹、神崎)、2事業所(大阪、東京)からなる8サイトを回る中で、ダイセルをもっと良くしたいという熱い想いをもったメンバーに出会い、全国各地から手挙げで集まった15人のメンバーと共に、このダイバーシティ推進プロジェクト、うえるびーがスタートしました。ウェルビーイングからもじった「うぇるびー」という愛称や、カラフルな果実を両手で支えるロゴクマークなど、メンバーがいろいろなアイデアを出し合って自主的に作りあげていく姿は、まさにエバンジェリスト、自分たちがリードする役割を担うことを強く意識していることが伝わってきました。
「うぇるびー」はセミナーやイベントを、プロジェクトメンバー自らがテーマ、目的を決め、集客をし、そのフォローまでを行うという、自主的な活動で動いています。まさに令和時代のダイバーシティ推進の在り方を体現してきたメンバーの方々から「意識改革」と「新しい働き方」の取り組みについてご紹介いただきました。
★「意識改革」一人ひとりの成長意識・認め合う文化
あべちゃんこと、安部さんの片手には「赤いダルマ」、家族の安全や幸せ、そして、このプロジェクトを笑顔あふれる活動にしたい、そのような願いをかけています。あべちゃんは、ダイセルで育児休業を取得した初めての男性社員で、休業したことが自分のキャリアに与える影響はマイナスなことばかりじゃなくてプラスの面もたくさんありました。ただただ家族と一緒にいたいなっていうそんな夢を叶えるために自分のキャリアに向き合い、その時間に様々なことにチャレンジしたそうです。この経験をぜひ社内に発信したいそんな思いでこのプロジェクトへの参加を決意したとのこと。
あべちゃんからご紹介いただいたのは、新潟、広島県の工場での「あべひろこうもりん」チームで実施した「キャリア研修活動」です。キャリア自立は「自分を知ること」が第一歩、そしてこのキャリア研修はwithコロナの新しい交流スタイルとして完全オンラインを取り入れて、自分だけでなく相手も知るきっかけにしたいと考えたそうです。事前インタビューでは、「キャリアに関して考える時間やきっかけがない」、「リーダーのヒューマンスキルの強化、管理職としての対人スキルの強化」などが課題として見えてきたことから「Let's Challenge!!自分の未来に繋がる第一歩!!」と銘打って研修をスタートしました。タイトルも工夫し、ダイバーシティを意識しすぎず、研修から感じる受け身な印象を取り除くため「うぇるびー交流会」として開催。キャリアの自立を学んだ後にも定期的なフォローアップが重要だと考え、キャリアビジョンを「夢シート」に書き込み、後日、自己開示大会を実施し、お互いの想いを伝え合うことで気づきを深めてこられました。またリーダーは部下のキャリアビジョンと組織ビジョンを重ねて応援できることを目指し、面談でも「夢シート」を活用し達成へと導くように取り組まれています。研修後のスクリーンショットに笑顔であふれており、参加された方々が共に良い時間を共に過ごされたという充実感が感じられました。
こうさんこと、藤田さんの片手には「オレンジのだるま」。これまで新潟県の工場で研究職として働いている中でより人の成長を応援したい、人材開発に携わりたいという想いが高まり今回のプロジェクトに手を挙げ、専任のコアメンバーとしてご活躍されています。こうさんからはコアチームで進めてきたキャリア研修についてご紹介いただきました。コアチームでは、「事業所・所属を超えてつながろう」をコンセプトに進めてきましたが、このコンセプトを見出すのにちょっと苦労したというお話がありました。というのも、もともとは1月~3月にかけて各現場での開催を企画していたのですが、新型コロナウイルスの影響で次から次へと延期、先行き不透明な状況に陥ってしまったのです。それでも当初の計画をあきらめず、オンラインに可能性を見出し方向転換。そこからオンラインツールを武器にして、コロナ禍だからこそ進化したキャリア研修のスタイルが提供できるチャンスと捉えてスタートを切りました。様々な職位、ジェンダー、年齢の方が共にキャリアを考える機会とし、国内事業所だけではなく海外事業所からも手上げ参加、男女混合コースと女性コースでシリーズ化して展開されました。オンラインだからこそ距離(事業所)を超えた横のつながりを作るキッカケにできたと、参加された方々からも楽しい時間を過ごされたとのことでした。
12月にはメンバーが再開するオンライン同窓会を開催し、半年間どうだった?など近況を語りあうと共に、男女混合コースでは、来年の自分を「絵で描いて」は発表、女性コースでは「ミニダルマ」を片手に夢を語りあったそうです。こうさんからは、「研修だけで終わらせずに、その後のフォローも行い、距離を超えて出会えたつながりを大切にする、来年度は、コアチームとしてもっと多く人に広げていきたい」という熱い想いを伺いました。
みぽりんこと、上野谷さんからは「ほめカツのおひたし添えでありがとう」というユニークなネーミングの取り組みをご紹介いただきました。みぽりんは「赤いダルマ」で家内安全、家庭が安全でないと、私もイキイキ働けない!との想いがこめられています。みぽりんはダイセルから一時離れ、15年間主婦業に専念し、昨年の夏に復帰しました。その復帰を応援してくれた皆さん、ダイセルで働くみんなの力になりたいという想いのもと、コアメンバーとして全集中で取り組んでいらっしゃいます。
この取り組みを始めたきっかけは、春に実施したダイバーシティ取り組みに関する社員インタビューでは、自分のキャリアを考える前に自分自身への肯定感が薄いと感じたことでした。一人ひとりが職場でイキイキするためには、コミュニケーションの活性化と心理的安全性を高めることが必要、一人ひとりの働きがいやイキイキを応援したい!そんな想いで決心したとのことでした。
「ほめカツのおひたし添えでありがとう」に込められているのは、「ありがとうを素直に伝える」「正しく叱り、導き支える おひたし(おこらない、ひていしない、たすける、しじする)」「褒めて 認める ほめ活」の想いです。自己肯定感をあげ、オンリーワンの意識を高める。誰だってありがとうと言われたら嬉しい、褒められたら素直に嬉しい、認められたらもっと嬉しい、そんな環境なら、少し難しいことでも頑張ってチャレンジしようと思えるし、頑張れる。取り組み内容としては、約4500人に対するアンケートの結果を公開、ポスター掲示、新井工場からスタートしたサンクスカードを全国展開、オンライン上のほめ部屋で「褒めるの学びあい」など、様々な取り組みを行って行うなど、意識改革は一朝一夕に成し遂げられるものではないので、これからも、地道にあきらめずに発信していくとのことでした。
★「新しい働き方」戦略的フレキシブルワーク&オンラインコミュニケーション
こちらのテーマでは、うぇるびーのブレストで上がってきた8つのテーマの中から、2つの取り組みについてご紹介いただきました。
まさくろさんこと近藤さんからは、金運&幸運アップの「黄色のダルマ」と共に戦略的フレキシブルワーク「働く場所・時間・内容を選んでベストパフォーマンスを発揮し、自立した働き方の実現を目指します!」についてご紹介いただきました。人が生産性をあげるにはどうしたらいいか、ベストパフォーマンスを発揮することが大切、そのためには働く場所と時間と自分がどんなことをしたいのかということを選びとる必要がある、ということをチームで議論を重ね実現に向け推進活動を行っていらっしゃいます。具体的には、テレワークの推進、単身赴任を選択制、社内兼業、社外副業の検討等、人事部門、関連部署と協業し、ダイバーシティの観点や現場に近い意見を吸い上げながら、会社に根付く取り組みにしたいとのことでした。
いっちこと一木さんと、ばりさんこと藤本さんからは、オンラインコミュニケーション促進チームの活動についてご紹介いただきました。いっちさんの「赤いダルマ」には、自分の想いを熱く語れるようにとの想いをこめていらっしゃいます。
ばりさんは、Tammyさんがダイセルをよくしたいと熱く語る想いに感銘を受け、このプロジェクトに手を挙げました。片手に掲げた「紫のダルマは」には、人と人がつながることによるモチベーション&働きがいの向上、自分自身のキャリビジョンも描きたいという想いが込められています。チーム名は「Webビタミン研究所」、新潟、大阪、兵庫、東京から集まったメンバーがWeb会議を使いこなるための全社活動を展開しています。
上期はオンライン技術UPとしてランチ交流会やSkype練習会を実施。ランチ交流会では社員同士をオンラインでツナゲルサポートを目的とし、おすすめの旅行先を紹介しあうなど楽しい時間が過ごせたとのことでした。Skype練習会はオンラインに不慣れな方へのサポート企画として実施したのですが、全社掲示板で広く応募すると参加者がほとんど手上げしてくれない、などの問題点がありました。。知らないメンバー同士での練習会は参加しにくかったかな?と感じたこともあり、次回は要工夫です。
また取り組みのひとつとして行っているのが、ダイバーシティ推進プロジェクトをより多くの人に身近に感じてもらうために、手作りのプロジェクト紹介動画を作成し、社内のサステナブルウィーク(全社SDGsイベント)で紹介したとのことです。さらに目玉企画として、イクメン対談と題して、育休取得者(あべちゃん)と当時の上司の対談を生配信で放送し、男性が育休を取得することに関してのリアルな状況を知ってもらいました。また当日はオンライン会議ツールのチャット機能を活用して視聴者とその場で感想を言い合い共感できる場作りを行ったそうです。良かった点として「あべちゃんという方が、育休をとっていたのは知っていたけど、勤務地が違うのでリアルな話は聞けなかった。オンラインになることで実際に聞くことができて、とても身近に感じた。もっと聞きたい。」という感想をいただいたなど、共有いただきました。お二人からは、距離を超えた信頼を構築するために、オンラインでの情報発信、交流会を実施し、オンラインコミュニケーション機会を増やしていきたい、オンラインに不慣れな人を見捨てずにサポートし、オンラインへの苦手を解消したい、この2点を引き続き実行し、職場を超えたオンライン交流につなげていきたいという想いを伺うことができました。
最後にTammyさんから「うぇるびーのこれからとして、社員の一人ひとりが尊重されて認め合いながら、働き甲斐を持ってその能力を最大限発揮できる、ダイバーシティの進化をリードする存在でうぇるびーは走り続けたい、そして人々にもっと多くの幸せをお届けできるダイセルグループに近づきたい」という強い想いをいただきました。
熱い想いでスタートしたプロジェクトは試行錯誤の毎日だったそうですが、皆様の取り組みにはダイセルをよくしたいという想いがあふれていて、何よりも、推進しているチームの皆さまがイキイキしている姿がとても素敵でした。貴重なお話を伺わせていただき、ありがとうございました。
(文責:臼井淑子、山岡正子)