「女性比率5%の会社の女性活躍推進の軌跡」
~コロナ禍を踏まえて目指すダイバーシティ、未来への展開~
事例発表: 日本電設工業株式会社
人事部 働き方改革推進部長 佐々木 智絵氏
本日は日本電設工業株式会社の働き方改革推進部長の佐々木智絵さまより、
『「女性比率5%の会社の女性活躍推進の軌跡」コロナ禍を踏まえて目指すダイバーシティ、未来への展開』を3つの内容について発表いただきました。
1.女性活躍推進の7年間の取り組み
2.新型コロナウイルスが気づかせてくれたこと
3.未来への展開
企業概要:日本電設工業株式会社様は1942年(昭和17年)12月15日に設立。従業員数は2442名(2021年3月1日現在)。東京都台東区に本社を置く総合電気設備工事会社です。
発表者:働き方改革推進部長 佐々木智絵さま
佐々木さんは1995年に入社後、秘書室、総務部を経て2010年に広報課長、2014年営業統括本部総務課長、2018年より人事部働き方改革推進部長に就任され、女性活躍推進の中心として活躍されています。趣味はマラソン、トレイルランニングととてもアクティブで素敵な女性です。
1.女性活躍推進の7年間の取り組み
まず現状ですが、女性比率5%、女性新卒社員採用比率5%。女性の準管理職(管理職一歩手前の資格者)比率3%、女性の管理職比率0.8%、女性部長2名、女性役員0。
2014年6月に『女性社員が働きやすい職場づくり』を目指して女性活躍推進プロジェクトがスタート。2015年4月に『女性活躍推進に関する5つの提案』を社内幹部に提出。2016年~2017年は全国の女性社員を対象に意識改革を目的とした『女性フォーラム』を6回実施。この時点では男女ともに女性活躍推進の取り組みに対して自分事として捉えていない人が多く、女性、男性の両方に意識改革の必要性を感じたそうです。
2017年4月に女性活躍推進プロジェクトは働き方改革推進委員会の中の『女性活躍推進分科』へと移行し、2018年3月に改めて働き方改革推進委員会に7項目を提言。
さまざまな取り組みをする中、2018年~2019年、管理職の意識改革のために植田先生の『意識改革研修』を女性と女性を部下に持つ管理職を中心に約800名に実施。また、女性の課題解決のための自主勉強会として『哲学シンキング』もスタートされました。
2.新型コロナウイルスが気づかせてくれたもの
前述の『意識改革研修』は研修直後のアンケートでは大好評でしたが、研修2か月後のアンケートでは行動の変化に繋がっていないという残念な結果に。また、『哲学シンキング』によって「コミュニケーションが取れていない」「働き方改革が進んでいない」など新たな課題が加わり、「このまま計画通りに進めても大丈夫なのか」と今後の方針について悩んだそうです。そんな時、新型コロナウイルス感染拡大による緊急事態宣言の発令。テレワークの実施やコロナ禍で業務の優先順位が変わったことが今後の取り組みを再考するきっかけになったそうです。
「もっとスピードを上げて意識や働き方を変えていく。社員一人ひとりが「会社が変わったよね」と実感できるようにしなければ!」
そんな思いで佐々木さんが取り組んだのは、組織を動かす社内幹部の意識改革です。
2020年後半からは決定権のある社内幹部、一部の管理職への「人間力アップ研修」をオンラインで実施。この取り組みは非常に効果があり、研修を受講した社内幹部や管理職の方から「社員のためになることをやりましょう」「研修後に部内でやってみたよ」「研修での気づきを翌日すぐ実践したよ」など、行動変容につながっているという声が届き始めたそうです。決定権のある方の心が動けば行動が変わり、組織も動く。また、動くスピードも速いと手ごたえを感じていらっしゃるそうです。
女性活躍推進の取り組みから会社全体の課題解決へ
『哲学シンキング』を全社に拡大し、組織横断、男女混合のグループワークを実施する予定だそうです。その際ファシリテーターは女性。
試験的にファシリテーターを女性にし、男性も交えたグループワークを実施したところ、活発でポジティブな意見がでたとのこと。女性がファシリテーターになることで女性の課題解決の場をつくることもでき、さらに女性自身が意識改革の取り組みに直接関わることで、男性の意識改革や組織の風土改革の取り組みをより自分事として捉えられるようになると考えたそうです。また、男女一緒のグループで職場の課題を考えることで、お互いの考え方の違いを知り、認め合うきっかけになり、男女間の意識の差も埋まりだすと実感したそうです。
3.未来への展開
さらに2021年は新たな挑戦として、ご自身の活動範囲を広げ、現場の働き方改革にも取り組んでいらっしゃるそうです。現場の問題を直接ヒアリング。他部門やキーマンを巻き込みながら課題解決に取り組み、内容は必ず現場にフィードバックしているそうです。困っている人が困っていると言えること、一緒に解決しようと行動することが人の心を動かし、組織の風土を変えていくことに繋がるという思いで今後も活動を広げていくそうです。
まだ本質的な課題が解決したわけではないけれど、女性に限らず社員全員にとって「この会社に入って良かったと実感できる職場」へ、社員全員の活躍推進へと新たなステップに進んでいきたいとおっしゃっていました。
また、今回は応援団として女性管理職の方3名も参加されていました。皆さんは女性管理職がなんでも気軽に相談できるオンラインOFF会「ローズマリーの会」をプライベートで開催し、女性が少ない会社だからこそ繋がって支えあっているそうです。3名の女性管理職の方も皆さん前向きで素敵な方々でした。
佐々木さん、貴重な発表をありがとうございました!
参加者同士のグループワークでも活発な意見交換が行われ、下記のようなコメントがございました。
・研修や講演などを実施して、そのときはモチベーションが上がっても、そこから変化につなげていくのは難しいと感じている。
いかに、モチベーションを継続させ、その後の行動につなげていくかが課題。
・ダイバーシティ推進は、やらなければならないこととして当然取り組んではいるが
なぜ取り組まなければならないか自分はまだ腹落ちできておらず、取り組みながらもやもやしている。
・「女性活躍」ということに対して、女性自身の中にも抵抗がある人がいる。
突き詰めると、男性女性関係なく、個人を尊重し、活躍したい人を応援していく、ということなのだと思う。
2016年4月に施行された女性活躍推進法は3年目となる2019年に一部改正され、より幅広い事業主へ環境整備を求めています。企業も様々な取り組みを進めてはいますが、現状はまだまだ目標との開きがあるようです。当事者である女性の意見を積極的に聞く風土づくり、そしてその意見を柔軟に受け入れ変化できる企業が増えることを期待しています。
(文責 昌宅由美子、田中慶子、山岡正子)